産業医科大学 産婦人科学
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過多月経にお悩みの患者さんへ
病気と手術の説明
過多月経にお悩みの患者さんへ

過多月経とは
過多月経とは

月経時の出血量が極端に多いために、日常生活や健康にさまざまな影響を及ぼす病気です。
貧血の原因になったり、外出できないなどの日常生活の不便をおこします。
医学的には、1回の月経での経血量が150mlを超える、8日以上月経が続くという定義がありますが、 「レバーのような塊が落ちる」、「昼も夜用ナプキンを使わざるをえない」という場合は、「過多月経」といっていい状態と考えられます。

「過多月経」は、子宮自体に形や大きさの異常がある「器質性過多月経」と異常のない「機能性過多月経」に分けられます。
器質性過多月経を起こす子宮筋腫や、子宮腺筋症がある場合には、その大きさや形、症状によって手術(腹腔鏡下手術ロボット支援下手術、開腹手術、子宮鏡下手術)や薬物療法(ホルモン療法)等の治療を行います。産婦人科での治療ではありませんが、子宮筋腫に対して子宮動脈塞栓術(UAE)も保険診療で可能であり、当院では放射線科で施行しています。

病気には理由が見つかると考えがちですが、子宮の大きさなどの問題がなくても「過多月経」をおこすことがあり、「機能性過多月経」と呼ばれます。「機能性過多月経」に対しても、「過多月経」を改善するために行える治療が複数あります。また、前述の「器質性過多月経」に対しても、状態によって「機能性過多月経」に対する治療を行います。
「機能性過多月経」に対して行う治療として、薬物療法(貧血に対する造血剤、月経量を減少させるホルモン療法等)の他に当院では、子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ®52mg)挿入、マイクロ波内膜アブレーション(MEA)を行っています。

子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ®52mg)とは

子宮内システム(IUS)は、もともと避妊具として腟から長期に子宮内に挿入しておく器具でしたが、IUSから長期に黄体ホルモン(月経量を減少させる効果をもつホルモン)を放出させる作用を持たせることで、過多月経の治療として使用されます。

子宮内黄体ホルモン放出システムの長所と短所

<長所>
外来処置で挿入ができるため、入院する負担がありません。一度挿入して、問題がなければ5年間挿入継続が可能であるため、比較的長期間の治療効果が期待できます。治療中断の希望があれば、外来で抜去も可能です。挿入中はほぼ妊娠しませんが、妊娠の希望がでたときには、抜去すれば妊娠の能力に影響はありません。

<短所>
挿入によって不正性器出血や月経異常を起こすことがあります。また、頻度は低いですが、付加した黄体ホルモンの影響での肝機能障害や乳房痛の症状が出ることもあります。自然にミレーナが子宮から脱落してしまうこともあります。重篤な合併症として、0.2%未満ですが、骨盤内の感染症、また、頻度は不明ですが、子宮穿孔、卵巣嚢腫破裂の報告があります。

ミレーナ挿入が行えないのは以下の方です

ミレーナの成分に対して過敏症(アレルギー)のある方
●子宮内膜悪性病変(子宮内膜癌・子宮内膜異型増殖症など)の方
●黄体ホルモン依存性腫瘍及びその疑いのある方
●性器感染症のある方、骨盤内、腟等に炎症のある方
重篤な肝障害の方

その他、患者様の状態によっては適応とならない場合もあります

マイクロ波宮内膜アブレーション(MEA)とは

子宮の表面は、子宮内膜という組織で覆われています。月経とは、この子宮内膜の一部が 剥がれ落ちることによって起こる出血を言います。
MEAは、直径4mmのマイクロ波アプリケーターを用いて、子宮腔内をマイクロ波で加熱し 組織を熱変性させることによって出血量を減少させる治療です。
当院では、MEAを行う際に子宮鏡検査を併用しており、より安全な治療を心がけています。 マイクロ波を照射する時間は子宮腔の大きさによりますが、10分~数10分程度です。

MEAMEA治療イメージ図

MEAの長所と短所

<長所>
切開などの外科的操作を行わないので、侵襲が少なく、1泊2日あるいは2泊3日の入院のみで手術可能です。子宮の温存が可能で、経腟的な手術のため傷跡も残りません。合併症が少ない、術後すぐに日常の生活(職場)に復帰できるなどの長所があります。

<短所>
過多月経が再発して再度の子宮内膜アブレーションや子宮摘出術が必要になる可能性があります(5%程度)。術後に妊娠する可能性は、低いですが皆無ではありません。避妊手術としての効果は保証されていません。

MEAの適応

過多月経のために子宮摘出術その他の外科的治療が考慮される方
●妊娠希望のない方
●子宮に悪性疾患がない方
血液凝固不全などの全身疾患や抗凝固療法による過多月経の方

MEAが行えないのは以下の方です

今後妊娠希望のある方
●子宮内膜悪性病変(子宮内膜癌・子宮内膜異型増殖症など)の方
●子宮腔の拡大・変形が高度でアプリケーターが届かない方
●子宮壁がうすい部分がある方(治療前にMRI検査を行い子宮壁が1cm未満でないことを確認します)
その他、患者様の状態によっては適応とならない場合もあります

お問い合わせ

過多月経にお悩みの方、マイクロ波宮内膜アブレーション(MEA)についてのご質問は産婦人科までご相談ください

外来受診の仕方

腹腔鏡下手術を中心とした治療を強くご希望の方や慢性骨盤痛(子宮筋腫および子宮内膜症)でお悩みの方は、毎週火・木曜日が婦人科初診受付日となっています。 できれば、現在受診中の主治医の先生から紹介状を頂いて受診してください。

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