産業医科大学 産婦人科学
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病気と手術の説明 腹腔鏡下手術について
病気と手術の説明
腹腔鏡下手術について

腹腔鏡下手術について
腹腔鏡下手術について

 産業医科大学産婦人科では、2006年7月に、北九州でただ1人(2008年5月現在)の日本産婦人科内視鏡学会技術認定医である蜂須賀徹教授を迎えて以来、積極的に内視鏡手術(腹腔鏡手術・子宮鏡手術)に取り組んでいます。

腹腔鏡手術とは

おへその周囲から内視鏡カメラを挿入してお腹の中を観察しながら鉗子(かんし)を操作して行う手術です。
外科系の分野ではすでにいろいろと行われていますが産婦人科の領域でも次第に、不妊症の検査をはじめ、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ:卵巣に液状成分が溜まって腫れている状態)や子宮外妊娠、子宮筋腫や子宮がんの手術等でも一般的に行われるようになってきました。

腹腔鏡手術のメリット

切開部が小さくなることから以下のメリットがあります

1.傷が小さく痛みが軽い 2.入院期間が短縮できる 3.術後癒着が少なくなる 4.出血量が少なくなる
これらのことは特に、妊孕性(にんようせい:妊娠しやすさ)を温存する保存手術においては大きなメリットとなります。
また、内視鏡カメラが拡大鏡としての役割を果たすことから、開腹手術で行われていたマイクロサージェリー(顕微鏡下手術)的な手術にも用いられるようになってきました。逆に、問題となる点は、合併症の発症です。
最初は腹腔鏡手術を予定されていながら腹腔内の強度の癒着や止血術などのため、途中で開腹手術に変更することが約1~2%の症例で起こります。

腹腔鏡手術の合併症


  • 出 血
  • 肺塞栓
  • 内視鏡手術特有の合併症

手術中に予想外の出血が認められた場合、緊急に開腹手術に移行したり、輸血製剤を使用する場合があります。ただ一般的には、同じ症例での開腹手術と腹腔鏡下手術とを比較すると、出血量は腹腔鏡下手術の方が少ないことが多いとされています。
輸血に関する説明は、術前説明の時に詳しく説明させて頂きます。
少し大きめの子宮筋腫などで手術の前から出血が予想される場合は、事前にご自分の血液をためておくこと(自己血貯血)も可能です。
エコノミークラス症候群という言葉を聞いたことがありませんか?これは長い間同じ姿勢を保っていると、体の中の太い血管に血の固まりができて、この固まり(血栓)が血管を介して移動し、肺の動脈に詰まってしまうという病気です。
肺塞栓の発症は初めから予測することはできませんが、発生する頻度をできるだけ低くするために、足を締め付けるストッキングをはいていただいたり、足を周期的に圧迫する機械をつけたりします。また、少しつらいですが、原則として手術の翌日の朝から歩いていただくようにしています。患者さんによっては、手術後からヘパリンという血栓の予防薬を使用する場合もあります。
腹腔鏡下手術では、自動的に止血と切断を行う機器を多用します。
電気メス、超音波メスなどでかなり多様な機器ですが、一般的には熱を加えることで機能を発揮する機器です。
腹腔鏡下手術は視野が限られていることもあり、子宮の近くの臓器である、膀胱、尿管、直腸などの消化管および大血管に損傷が及ぶ可能性があります。数日後に症状がでてきたために、消化管の再吻合や一時的な人工肛門などの外科的処置が必要となることもあります。
このようなことが起こるのは非常に稀ですが、重症の子宮内膜症の方の場合は、特に癒着が直腸や尿管近くに及んでいる可能性があるので、細心の注意を払って手術を行っています。

これらのもの以外にも合併症は起こる確率はあります 詳しくは、入院後担当医から手術前説明のときに説明をいたします


当科で行っている腹腔鏡下手術の術式

子宮や卵巣の機能を温存する手術から、子宮を摘出する手術まで腹腔鏡を用いた手術を行っています。
(保険上の手術病名とは違います)

  • 腹腔鏡下子宮筋腫核出術
  • 腹腔鏡下附属器切除術
  • 腹腔鏡下癒着剥離術
  • 腹腔鏡下子宮全摘術
  • 腹腔鏡下子宮内膜症病巣切除術
  • 腹腔鏡下卵巣焼灼術
  • 腹腔鏡下卵巣嚢腫切除術

腹腔鏡手術の対象となる疾患について


  • 子宮筋腫
  • 子宮内膜症
  • 卵巣嚢腫
  • その他の疾患

子宮にできる筋肉の瘤のような塊で、良性の腫瘍です。
日本人成人女性の3~4人に1人にみられる非常にありふれた病気ですが、過多月経(月経による血量が多い)、月経痛、下腹部腫瘤感、頻尿等の症状のある方や挙児希望の方で子宮筋腫以外に原因が見つからない方などは積極的な治療が必要になります。
治療方法には薬物による治療、UAE(子宮動脈塞栓術)、FUS(経腹的超音波凝固療法)、腹腔鏡手術、開腹手術などがあり、患者さんの状態により治療方法を選択しますが、子宮や卵巣の機能を温存する場合は、腹腔鏡手術を選択される方が増えています。
月経困難症、慢性骨盤痛、性交時痛、排便時痛、過多月経などいろいろな症状を持つ患者さんがいます。
もちろん無症状で治療が必要ない方から、不妊症の検査中にはじめて診断される方もいます。治療法としては、薬剤による治療および外科的治療があります。薬剤による治療としては、消炎鎮痛剤、ピル(経口避妊薬)、GnRH製剤、ボンゾールなどのプロゲステロン製剤などがあり、患者さんの症状や、病状によって、薬物治療、外科的治療を選択して治療を行っています。
外科的治療となる場合は腹腔鏡手術が主な治療法となります。卵巣や腹膜の子宮内膜症となると、高い確率で腹腔内(骨盤内)に癒着が生じます。子宮内膜症による痛みだけでなく癒着によっても痛みが生じるため、外科的治療を行うことで病変部の切除だけでなく、本来の臓器の解剖学的正位置に戻すことによって月経困難症に有効であると言われています。
再発に対する問題は今後解決していく必要がありますが、疼痛の緩和という点と、確定診断ができる(病理診断)という点からは腹腔鏡手術が有効とされています。特に子宮内膜症による卵巣嚢腫と悪性変化については、近年問題とされるようになってきており、子宮内膜症の卵巣嚢腫の方の一部に卵巣の悪性腫瘍が発生しやすいという報告があり、4cm以上の大きさがあれば、年齢などに応じて詳細な経過観察と外科的治療が必要となる場合がありますので治療法については主治医の先生とよく相談されることをお勧めいたします。
卵巣嚢腫で頻度が高いのは皮様嚢腫という卵巣嚢腫です。卵巣の中に、髪の毛や皮膚・歯の成分ができる嚢腫です。
自然に軽快することはありませんので、大きさと症状に応じて外科的治療が必要となります。
また、その他卵巣腫瘍は多岐にわたります。
自然軽快する機能性嚢胞から悪性疾患までありますので、腫瘍マーカー、画像診断などを必要によって行い必要な場合に外科的治療を行います。
腹腔鏡下手術は腹腔内の癒着剥離、子宮外妊娠などをはじめ、今後悪性疾患にも適応されていくと考えています。
腹腔内の癒着剥離は高度な癒着に関しては開腹手術に移行する場合もありますが、腹腔鏡の技術的向上により、内視鏡によって行われることも増えてきています。
拡大鏡であることのメリットを生かして、顕微鏡的な精度の手術が可能であると考えています。
一方、触覚に関しては内視鏡手術が不得意とするところですので、触覚が特に必要な場合や、まったく視野の得られないような高度の癒着がある場合は開腹手術が選択されます。


麻酔管理について原則として全身麻酔になります。

麻酔は麻酔科医に完全委任しています。手術室に行って麻酔で意識がなくなってから、気管という呼吸をする管の中にチューブを入れて人工呼吸を行うのが標準的な全身麻酔です。麻酔科の先生の判断で、硬膜外麻酔という背中から行う局所麻酔を追加することもあります。
産業医科大学産婦人科にて手術を受ける方には、手術前に麻酔説明外来で、麻酔科医から説明を受けていただくようになっています。

入院期間について

平均的には、手術後3~5日で退院する予定になっています。細い内視鏡だけで済んだ方の場合、退院が早まることもあります。 手術の時におなかの中に二酸化炭素が入っているため、手術が終わって数日間は、少し強めの肩こりのような肩の違和感と、胃のあたりの重い感じがあるかもしれませんが、これは心配ありません。
おなかの中のガスの影響と、おなかをふくらませていた刺激が残っているためです。

外来受診の仕方

腹腔鏡下手術を中心とした治療を強くご希望の方や慢性骨盤痛(子宮筋腫および子宮内膜症)でお悩みの方は、毎週火・木曜日が婦人科初診受付日となっています。
できれば、現在受診中の主治医の先生から紹介状を頂いて受診してください。

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